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2026年3月号『祈り』

「お子さま人生相談室」という本の著者は小林エリカさんです。私たち大人の悩み事を子どもに答えてもらう試みです。子どもへはインタビュー形式で話してもらっているところに著者の工夫が感じられます。

 埼玉県の七十七歳男性じーじさんの相談です。
 母が九十九歳で老人ホームにはいり、コロナで人に会えない、膝も痛い耳も聞こえづらい、生きている喜びもなく、息子である自分に「長生きなんてするんじゃなかった。死なせて欲しい。」と言います。時々ホームへ行ったり差し入れしたりしますが、どうしたらいいですか?

 kさん八歳の答えです。
「お祈りをしてみればいいんじゃないかな。」
……どんなお祈りをすればいいでしょうか?
「心の中で、自分のお母さんにどう思ってほしいかと思いながら、口でお祈りを言ってやったほうがいい。」……どんなお祈りを唱えたらよいでしょうか?

「お母さんが死にたいと思わずに、神様がいつもそばにいて、神様のくださった命を大切にしてくれますように」とかがいいと思う。
……kさんはお祈りをしますか?
「毎日します。」
 この子は「神」そして「祈り」ということばが容易に出てくるのでした。
 私たちにとって「神」は「仏さま」であり、「祈り」は「お念仏」と受け取ることができます。

法然上人のおことばに

問うて云く 摂取の益をこうぶる事は、平生か臨終かいかん。答えて云く、平生の時なり。平生の時照らしはじめて、最後まで捨て給わぬなり。

仏さまが救ってくださるのは、普段の時か臨終の時かどちらでしょうか。普段のときです。私たちがおねんぶつを唱え始めた時から続けていくことにより、最後まで見捨てないということです。 

 お念仏は亡くなった時に唱えるものと思う方がいます。しかし大事なのは生きている今に唱えて、そして私のすぐそばで見守ってくれている仏さまの存在に気付くことなのです。
 さて相談者のじーじさんの母親を覆っているのは、孤独や暗闇です。何とかして母親の口からお念仏が出てくればと願います。

 唱え続ける中に一条の明るい光が見出せるはずです。さらに先立たれた大切な方々が待っている極楽を思うとき、一層の安心感に包まれると存じます。
 今月はお彼岸月。浄土への想いと共にお参りください。

(住職 畑中芳隆)

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